タイトルに惹かれて読んでみました。
前回に続き、脳に関する本です。
著者は東北大学教授、医学博士の川島隆太先生。
ゲームやスマホを使用している時の脳の状態や睡眠障害、朝ごはんと脳との関係について、脳科学の観点から詳しく書かれてました。
特に興味深かったのが、朝ごはんについて。
ただ食べればよいのではなく、何を食べるかも重要だそうで、目から鱗が落ちました。
内容をご紹介します。
目次
内容
「早寝、早起き、朝ごはん」の大切さについて説いた本。
著者の個人的体験にもとづく話ではなく、「早寝、早起き、朝ごはん」が脳にもたらす影響について実験、研究の結果をもとに解説している。
◆ゲームやスマホを使用している時の脳の働き
人間の脳の中で最も重要なのは「前頭前野」という部分。
おでこの後ろに位置しており、何かを学ぶ、物事を覚える、考える、集中する、頑張る、コミュニケーションをとる、行動や情動を抑制するというような働きがある。
この前頭前野がゲームをしている時や携帯電話を使って会話やメールをしている時には全く働いていないことが分かった。
◆感情障害の子どもたち
2000年頃から、母乳をあげるときにスマホを見る親が急増。
その結果、親子の愛着形成がなされずに、子どもが感情障害に陥っている可能性がある。
最近急増している学級崩壊の原因は、親がスマホを見ながら子どもを育てたことが原因ではないかと神経小児科医たちは警鐘を鳴らしている。
◆朝ごはんと脳の関係
子どもの学習態度は「内発的意欲」によって向上する。
この内発的意欲を育てるには、家族そろって朝ごはんをきちんと食べることが最も効果的。
子どもがいる家庭で調査したところ、約半数の保護者が子どもと一緒に朝ごはんを食べていないことがわかった。
中学生・高校生に至っては30%以下の子どもしか親と一緒に朝食をとっていない。
小学校低学年以下の子どもたちがいる家庭で半数以上が親子一緒に朝食をとっていないのは、子育てにおいて非常に深刻な事態だと著者は主張。
また、朝ごはんは何を食べるかも重要。
ご飯やパンだけでは脳の働きには不十分であり、おかずも食べることで学習効果が上がり、記憶が定着することが脳科学では判明している。
朝ごはんは足の速さや幸福度にも影響する。
◆親子のコミュニケーションが脳にもたらす影響
小学5年生から中学3年生までの約4万人のデータを解析したところ、成績上位25%グループの子どもたちの方が、下位25%グループの子どもたちよりも、「親にしっかりと話を聞いてもらっている」と感じている割合が高いことが分かった。
そのことから幼稚園児のいる家庭に協力を仰ぎ、週に1回、子どもと一緒に10分から20分、何かに一緒に取り組んでもらうように依頼。
29組の親子のうち半数に親子でホットケーキを作りながら子どもをたくさんほめてもらったところ、興味深い事象が起きた。
それは、「自分のこれまでの子育ては間違っていたかもしれない」という親が続出したこと。
「子どもと一対一で向き合っていなかった」「子どもに集中したことがなかったかもしれない」といったことを親が次々に口にし始めた。
◆睡眠時間と脳との関係
朝ごはんを食べるためには、夜早く寝ることが必要。
睡眠時間は短すぎても長すぎても良くない。
重要なのは質である。
子どもたちの心身の発達において睡眠の重要なポイントは2つ。
・成長ホルモンが出る10時には深い眠りに入っていること
・記憶が固定するレム睡眠(眠りが浅い時間)が睡眠中に6~7回訪れること
つまり、夜9時には寝て6時間~8時間は眠ることが必要。
睡眠時間が長い子ほど、記憶に関わる脳の海馬が大きく発達している。
子どもたちの夜更かしの原因はスマホやテレビである。
実験や調査では以下のことがわかっている。
・テレビを見る時間が長くなると3年後には言語性知能の発達が低くなる。
・スマホや携帯電話を使用すると勉強したことが脳から消える。
◆作動記憶トレーニングで能力が向上
作動記記憶とは理解、学習、推論など認知的課題の遂行中に、情報を一時的に保持し操作するためのシステム。
記憶できる容量が限られていて、使うとすぐに記憶した情報が消える。
「読み・書き・計算」でこの能力は向上させることができ、その成果は子どもだけでなく大人でも証明されている。
感想
「ホットケーキで能力が上がる」ってどういうこと?と思い、読んでみました。
スマホやゲーム、テレビが子どもたちに及ぼす影響について、メディアそのものが脳にもたらす影響だけでなく、メディア使用によって引き起こされる睡眠不足や朝食抜きといった子どもたちの生活習慣にまで話を広げてくれているので、この本を読むだけで子どもの生活習慣について学び、考え直すことができて、とても良かったです。
タイトルにあるホットケーキの話は本書のごく一部なのですが、内容はとても考えさせられるものでした。
私自身、自分は娘の目をしっかり見て子育てしているか、考えるきっかけをもらうことができました。
復職して、娘といる時間が限られている中、オムツをかえたり、食事を与えたり、お風呂に入れたりという行為で子育てしている気になっている自分を戒めるのにちょうどいい機会を与えてもらったと思います。
ただ、本書を読んでいて、疑問点もいくつかわいてきました。
本書の中で、電話やメールでは脳の前頭前野が働いていないということが書かれていました。
ということは、
・コールセンターで働く人の前頭前野は仕事中ずっと動いていないということなのか?
・パソコンとスマホを使って書評を書いたのでは、どんなに頭を使っているようでも前頭前野は働いていないのか?
(紙に書いてからパソコンで打った方が良いということか?)
・パソコンやタブレット、スマホを使って仕事をする現代社会では、働く人のほとんどの前頭前野が仕事中動いていないということなのか?
・もし、これらがすべてYESなのであれば、子どもだけでなく大人も危険な状態なのではないか?
働く現代人の脳について書かれた本も、ぜひ読んでみたくなりました。
(そんな本があるのかわかりませんが・・・)
少し前に読んだ『メディアにむしばまれる子どもたち』は子どもの心とメディアの関係について書かれていましたが、この本は子どもの脳とメディアの関係について書かれています。
どちらも勉強になる内容でしたが、私は『ホットケーキで「能力」が上がる』の方が好きでした。
理由は
・調査や研究結果が豊富に紹介されていて説得力がある。
・生活習慣の改善策が具体的。
・子育て中の親を批判するだけでなく、社会を変えるべく著者自身が企業に働きかけをしている。
から。
メディアと子どもの関係について本を探している方の参考にしていただければ幸いです。
『メディアにむしばまれる子どもたち』についてはこちら↓