マネバナナ

アーリーリタイアを夢見るアラフォーママが好きなことを好きなように書いています

『みかづき』広がり続ける教育格差について考えさせられる物語。

 

 

 

森絵都さんの小説『みかづき』を読みました。

 

余りの分厚さに読み始める前はちょっと尻込みしましたが、さすがは2017年本屋大賞第2位の本。面白すぎて、ページをめくる手を止めるのが大変でした。笑

 


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目次

 

内容

昭和36年から平成19年ごろまでの塾と教育問題を主軸に描かれた小説。物語は大きく3つの時代に分かれて描かれている。

第一部は小学校の用務員を経て、後に妻となる大島千明と共に創設する「八千代塾」の創始者・大島五郎の物語。第二部は塾が乱立し始める時代に「千葉進塾(元八千代塾)」を守り抜く五郎の妻・大島千明の物語。第3部は五郎と千明の孫である一郎が親の貧困により広がる教育格差を埋めるために奮闘する物語。

「塾」を中心に、戦後間もない昭和初期の、塾に通うことを教師や周りの友人に秘密にしなければならなかった時代から、高度経済成長の時流に乗って塾業界が急速に発展していく時代、親の貧困によって塾に通うことができずに学校教育から落ちこぼれていく子どもたちが増加する時代と、各時代の教育問題を取り上げた社会的な内容に、大島家を取り巻く「家族の問題」を織り交ぜた、大島家3世代にわたる壮大な物語となっている。

 

 

 

感想

とっても分厚い本なので、最初は読み切れるか不安でしたが、一度開くと面白すぎて本を閉じることができず、あっという間に読み終えてしまいました。夜中の3時くらいまで読んでいたので、おかげで寝不足です。小説でありながら、実際にあった戦後から平成にかけての日本の教育問題が描かれており、自分の生きてきた時代、そして今の子どもたちが抱える問題を客観的に見ることができて、勉強になりました。

特に涙なしに読めなかったのは第三部の一郎の物語。ゆとり教育によって授業時間が減少し、塾でそれを補う子どもたちと、親の都合で塾へ通えない子どもたちの格差が広がっていった時代。シングルマザー、父親の病気などの家庭の事情で塾に通えない子どもたちは学校の授業についていけず、「教室にいない存在」として扱われていく。そういった子どもたちの存在に気がついた一郎の奮闘は、物語の中のお話とわかっていても、応援せずにはいられませんでした。

この小説の中で描かれているのは平成20年ごろまでのことですが、一郎の物語は今も続いていると思います。塾に通えないどころか給食費も払えない家庭の子どもたちの話は今も聞きます。現在私たちを苦しめているコロナウイルスの影響で親が職を失ったりして、さらに貧富の差は広がっているのではないでしょうか。また、オンライン授業を行える学校と行えない学校があるのも、新たな教育格差を引き起こす原因となる気がします。

未就学児の子どもを抱える親として、一郎の物語は他人事とは思えませんでした。我が家も夫か私、どちらかが職を失ったり病に倒れたりすれば、あっというまに子どもたちは学校教育から取り残されてしまう。そんな未来を想像してぞっとしました。

最近はテレビをつければ自民党総裁選の話ばかりですが、子どもの教育や、子育て世代に対する政策について語られることはほとんどありません。(野田さんが「子ども庁」創設について語ってはいますが…。)日本の未来を担っていく子どもたちなのに、なんで子どもに関する話題が政策に出てこないんだ…と悶々としている時にこの本を読んだので、余計に一郎の話に感情移入してしまったのかもしれません。我が子の未来をどう守っていくか、今の私はそのことで頭の中がいっぱいです。

 

 

 

 

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