『子どもの見ている世界 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」』を読みました。
著者は内田伸子さん。
子育て中の方に限らず、みなさん、この方にはご自身が子どもの時にお世話になっているのではないでしょうか?
というのも、内田先生は「こどもちゃれんじ」の監修や、『おかあさんといっしょ』の開発・監修に携わっている方なのです。
こう聞くと、なんだかとっても親近感がわいてきますよね。
私がこの本を手に取ったきっかけは、まさにタイトル通り、「娘には、世界がどんな風に見えているんだろう?」と思ったから。
ハイハイができるようになってからというもの、娘は家の中を好きなように移動しては、気になるものを片っ端から手に取り、口に入れていきます。
本当に、「なぜそんなものに興味を?」というものまで、彼女は好奇心をくすぐられるようで。
しかも、気になるものを見つけた時、目がキラッて光るんですよね。
「あ!これ狙っている!」ってすぐわかります。
まさに獲物を見つけたライオンのよう。
そして、ものすごいスピードで手を出してくる。
人間て本当はこんなに好奇心に溢れた生き物なんだなって娘に気づかされました。
私はいつからあらゆるものを〈常識〉とか〈当たり前〉というフィルターを通して見るようになってしまったのか・・・と娘を見ていて反省しました。
そんなことをきっかけに、「赤ちゃんからはどんな風に世界が見えているのか教えてくれるような本はないかなー」と思って本屋さんをふらふらしている時に見つけたのがこの本。
「おぉ!私のイメージ通りのタイトル!」と思って読んでみました。
前置きが長くなりましたが、内容をご紹介します。
目次
内容
0歳から6歳までの子どもの発育について書かれた本。
著者の専門である発達心理学の観点から、運動能力の発達、個性や自我の芽生え、認知能力の発達、言葉の習得について解説。
各項目のはじめに子どもの視点で書かれた短いストーリーが掲載されており、それを読むだけでも「子どもはこういう時、こんな風に考えていたのか。」という発見につながる構成になっている。
各章の目次と概要は以下の通り。
■1章 乳児期ー世界づくりの開始
ねんね期から歩き始めまでの赤ちゃんの成長について解説。
赤ちゃんが泣く理由、目が良く見えていない状況で周囲を把握する方法、空間認知能力の習得、ことば習得の準備などについて知ることができる。
■2章 個性の芽生えー「物語型」と「図鑑型」
赤ちゃんの頃から「気質」「性格」はある程度決まっている。
著者はとある実験から赤ちゃんは以下の2パターンに分類されることを発見。
「物語型」=おままごとが好きで物語絵本を好むタイプ
「図鑑型」=乗り物のおもちゃやブロック遊びが好きで図鑑や科学絵本を好むタイプ
母親は無意識に子どものタイプを把握し、それに見合った言葉かけをしている。
どちらのタイプが良いということではなく、個性を大切に育てることが重要。
■3章 イメージの誕生ー認知革命
第一次認知革命=生後10ヶ月頃
心の中になんらかの像を思い浮かべることができるようになる。
「見立て遊び」や「延滞模倣」という遊び方ができるようになる。
第二次認知革命=5歳半ごろ
未来を意識してプランを立てる「プラン能力」や、自分の行為を振り返り、反省したりする「メタ認知能力」、過去にさかのぼって出来事の原因を推測する「可逆的操作」と言った能力が身に着く。
第三次認知革命=9~10歳ごろ
意志や判断、情緒や倫理意識など、人間としての高次な心理機能を担う脳の前頭連合野が成長し、人間性がぐんと育つ。
■4章 ことばの不思議ー子供が世界とつながるとき
子どもがどのように頭の中で物事を把握し、言葉を選び、発しているのかを月齢、年齢ごとに解説。
「ニャンニャン」という言葉を犬のぬいぐるみやタオルにまで使っている子どもにも、彼らなりのルールがあってのこと。
ことばは自分の感情や考えを表現する手段であり、知識を獲得する手段ともなる。
■5章 絵本の読み聞かせー心に栄養をとどけるいとなみ
絵本の読み聞かせ効果を解説。
絵本の読み聞かせにおいて大事なことは親子の感情の交流。
読み聞かせの効果はことばの習得にとどまらない。
物語の内容を聞き手が疑似体験することで未知の現実を想像し、他人の気持ちを理解する糸口を与えられる。
■6章 子どもを取り巻く新たな問題ースマホに子守をさせないで
スマホ育児に著者が反対する理由、テレビや映像メディアとの付き合い方について解説。
子どもが新しく物事を学ぶには、すでに知っていること、わかっていることと関連付ける必要がある。
つまり、子どもの理解には生活体験が不可欠であり、子どもの経験にないことをテレビ等の映像メディアから学ばせることは困難。
ただし、著者は一切の映像メディア視聴を否定しているわけではない。
映像メディアの強みを活かした子育てについても解説している。
■7章 遊びで広がる想像のつばさー毎日が「発想」の実験日!
遊びを通して得られる「集中力」「社会体験」「論理的思考力」について解説。
子どもの遊びを邪魔せずに上記の能力を伸ばす親の関わり方について紹介している。
■8章 想像力は「生きる力」-見えない未来を思いえがく
思考には「収束的思考」と「拡散的思考」がある。
収束的思考は暗記能力、拡散的思考は想像力。
人間が生きていくために必要なのは想像力。
子どもの想像力をのばすには子どもからの「なぜ?」「どうして?」という質問にすぐに答えを与えず、「どうしてだろうね?」「なぜかしらね?」と質問返しをしていっしょに考える習慣を作る。
そして、子どもが出した「対案」を聞いてほめてあげる。
このような会話を繰り返すうちに考える力が育つ。
■9章 英会話塾は効果があるの?-ことばは子どもの未来を拓く
乳幼児期の英語学習が母語の発達に及ぼす影響について解説。
乳幼児期の英語学習のメリットは発音と聞き取りのみ。
第二言語の習得は母語が土台となるため、まずは母語をしっかり身に付けさせることが重要。
■10章 お母さんあせらないでー将来の学力はいつ決まる?
小学校の学力テストの結果に影響するのは保育園・幼稚園での保育形態。
子どもを伸ばすのは自由保育。
小学校の先取り教育をするよりも、子どもの自発的な遊びを大事にすることが近い将来の学力を上げることにつながる。
■11章 子育てに「もう遅い」はありません
子どものしつけには「共有型しつけ」と「強制型しつけ」がある。
共有型しつけ=子ども自身に考える時間を与え、共感的で援助的なサポートをする。
強制型しつけ=子どもに考える余地を与えず、指示的・トップダウン的な介入を行う。
幼児期のしつけは学力まで左右するものであり、子どもを伸ばすのは「共有型しつけ」。
しつけは親の収入や学力は関係ない。
感想
子どもの目に大人や世界がどんな風に映っているのか、とてもよくわかる本でした。
私が読んでいて特におもしろいと感じたのは、第4章の「ことばの不思議」。
犬も猫も「にゃんにゃん」と子どもが言うと、大人は「まだ犬と猫の区別がついていないんだなー。」と思ってしまうけど、子どもの中ではあるルールに基づいて犬も猫も「にゃんにゃん」と言っているようです。
これから娘がことばを話し始めたら、どんな法則に基づいて同じ言葉を全く別のものに使っているのか、観察するのが楽しみになりました。
娘は今、しきりに「あった!」と言うのですが、私たちが「あった!」を使うシチュエーション以外でも多用してきます。
これは喃語なのか、それとも娘の中ではあるルールに従って使っているのか、この本を読んでからずっと考えているのですが、今のところ答えは出ていません。
解読したくてうずうずしてます!
10章は私が今ドはまりしている非認知能力について。
本書では「非認知能力」という言葉は使っていませんが、内容は今まで読んでた非認知能力と被る内容でした。
やはり早期教育よりも、まずは子どもの意志を尊重する保育が重要なようです。
これは保育園や幼稚園での保育に限らず、家庭保育でも言えること。
そのことを書いたのが11章。
育児をしていると、その大変さから、つい子どもの気持ちよりも大人の都合を押し付けてしまいがちですが、やはりそれは子どもの発育においてよくないそうです。
問題なのは、親自身が「強制型しつけ」をしていることに気づいていないこと。
この本を読んだ後に、薬局でさっそく強制型しつけをしているママさんを見つけてしまいました。
私が怒られているわけではないのに、その方の口調にドキドキしていたら、そのママさんを見て、他のご家庭のお子さんが自分のママに「あのママ怖いね。」って小声で言っているのが聞こえてきました。
その言葉が聞こえて我に返ったのか、強制型ママさんはその後トーンダウン。
見知らぬ子どもの正直な言葉が響いたのかもしれません。
娘はいま、生後10ヶ月。
これから6歳までは、体だけでなく、脳や心に大きな変化がたくさん起こるようです。
「ちょうど今、頭の中でイメージできるようになってきているのかー。」など、本書を読みながら、娘の成長がますます楽しみになりました。
〈内容〉には書ききれませんでしたが、乳幼児期の子育てにおいて知っておいた方が良い情報が盛りだくさんな本でした。
これから何度もお世話になること間違いなしなので、〈娘の成長に合わせて何度も読み直したい本〉のリストに加えておきました。
子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」
- 作者: 内田伸子
- 出版社/メーカー: 春秋社
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子どもの見ている世界 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」 [ 内田 伸子 ]
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