『夜の神話』を読みました。
この本は『子どもを本好きにする10の秘訣』で紹介されていた児童文学です。
子ども向けの本ではありますが、生命や生き方、エネルギー問題など深く考えさせられる内容となっており、大人でも充分読みごたえを感じられる物語でした。
目次
あらすじ
主人公は小学6年生の正道。
有名一流大学に一発合格することを目標としており、中学も付属に進学するべく勉強に励んでいた。
ところが、親の都合で田舎のおばあちゃんの家に引っ越すことに。
そこは遊ぶところも塾もないような場所。
授業は前の学校と比べるとものすごく遅れているし、先生の頭も悪い。
新しい環境になじめない正道は、「きっとパパもママも、ぼくの将来なんてどうでもいいと思ってるんだ。もしかしたら、パパやママのほんとうの子どもじゃないのかもしれない。」なんて考えてしまうほどやさぐれていた。
そんなある日、正道は自転車でカエルを引いてしまう。
「お墓を作ってあげよう」という朝子お姉さんの誘いを断ったうえ、死んだカエルを気持ち悪いとさえ思ってしまった正道は、数日後にツクヨミ様という神様から闇鬼を治すための饅頭を食べさせられる。
闇鬼とは、自己中心で他を思いやる気持ちをもたない者、欲が深くて自分の欲を満たすことだけしか考えられない心のこと。
饅頭を食べた正道はセミや木の声が聞こえたり、座敷童が見えるようになったりと不思議な力が身につき、闇鬼の心も次第に消えていく。
夏休みに入った頃、正道の父親が勤める原子力発電所で機械の不具合が発生。
父親の同僚であり、正道が小さい頃から大好きなスイッチョさんが被ばくしてしまい、正道のおばあちゃんの家で静養することに。
変わり果てたスイッチョさんの姿を見て、スイッチョさんを助けることを決意した正道は、ツクヨミ様の作った万能薬の饅頭を手に入れようと奮闘する。
なんとか饅頭は手に入ったものの、月うさぎに変えられてしまった正道。
ツクヨミ様とともに月で過ごしていると、父親が勤める原子力発電所で再び放射能漏れが発生!!
どうにかして助けたい正道は、月うさぎの姿で地球へ向かい…。
感想
子ども向けの本に対するイメージが、この1冊で変わりました。
字が大きくて小学生向けの本なのに、読みごたえは充分。
命、座敷童、天文学、八百万の神、歴史、原子力発電、自然エネルギー、生き方と、読者の好奇心を刺激し、もっと知りたい!と思わせる要素がいっぱいでした。
どこに興味を抱くかは読者次第。
1冊の中にこんなにたくさんの種が散りばめられていれば、どんな子でも「これについてもっと知りたい!」と思えるテーマが1つはあるのではないでしょうか。
子どもの頃にこんな本に出会えていれば、私の人生も変わっていたかも…なんて思ってしまったほどに、刺激的な本でした。
神様が出てきたり、生き物や植物の声が聞こえるようになったりというファンタジーな部分と、原子力発電という現実の問題。
真逆とも思えるこれら2つが1つの物語の中にしっかり納められているのも、この本のすごいところ。
大人向けの本にはなかなかない構成だと思いました。
ファンタジー部分で子どもの心をつかみつつ、今私たちが実際に直面している問題について伝え、より深く考えるきっかけを作ってくれています。
この本はぜひ我が家に置いておきたいと思ったのですが、残念ながら在庫切れで重版未定のようです。
こんなに良い本が中古でしか手に入らないなんて…。
私は本も絵本も新品を買う派ですが、この考えは変えてはいけないということも、この本に気づかせてもらいました・・・本の内容とは関係ないけれど。
著者、出版社、本屋さんを応援するため、そして、このような素敵な本がいつでも手に入る環境を維持するため、私はこれからも本を買い続けます。
とりあえず、この素敵な本を我が家に置くべく、中古で探そうと思います。
本書が紹介されていた 『子どもを本好きにする10の秘訣』はこちら↓