平野啓一郎さんの小説『ある男』を読みました。
手に持った瞬間、「長いな~。時間かかりそうだな~。」と思ったけれど、面白すぎてあっという間に読み終えてしまいました。
目次
あらすじ
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる…。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
(引用元:Amazon)
感想
死んだ「谷口大祐」は、本当は誰だったのか。
その事実がわかるにつれ、いろいろと考えさせられる本でした。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、「谷口大祐」と名乗っていた男は、実は悲しい人生を背負っている男でした。
2回も自殺を試みるも死ぬことができなかった彼は、「死」以外の方法で生まれ変わることにしました。
戸籍を捨て、過去を捨て、全くの別人として始まった彼の新たな人生。
それまで彼の人生にずっとつきまとっていたものから解放され、他人の人生を生きることでやっと自分らしく生きる術を手に入れるなんて、すごい皮肉だなと思いました。
結局、彼の新たな人生は長くは続かずに幕を閉じます。
この人は、幸せになることを許されない運命だったのだろうか…。
一度はそう思ったけれど、幸せの絶頂の中で死を迎えられたことは、彼にとって良いことだったのかもしれないとも思ったり。
この物語の根底にあるのは「家族」というテーマ。
ストーリーは面白かったけれど、ちょっと重かったです。
ラスト4ページで泣かせてくれたおかげで、スッキリ読み終えることができましたが。
最後は里枝と子どもたちの幸せを祈りながら本を閉じました。
誰にも彼らの人生を狂わされることのないように。
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