『子どもの絵の見方,育て方』を読みました。
子どもの絵にはこんなにたくさんの情報が盛り込まれているのかと、驚きの連続でした。
この本を読むと、子どもの絵を見る目が変わります。
「うちの子はお絵かきが好きではない」と思っている方。
もしかしたら、お子さんはお絵かきが好きではないのではなく、本当は描きたくても描けない子になってしまっているのかもしれません。
目次
内容
子どもの絵は発達と深いかかわりがある。
しかし、加熱する早期教育によってその過程を崩され、最近では4~5歳くらいから絵の描けない子、絵のきらいな子が続出している。
大人の絵を教え込まれて、自分の想いを表現する絵を描くことができなくなってしまった子。
発達の順序を無視して文字を教え込まれてしまい、絵を描くことができなくなってなってしまった子。
彼らは生涯の中で創造性がことのほか活発に、しかも豊かに発達する時代にその力が育つチャンスを奪われてしまったのである。
人類の歴史を見てもわかるように、絵→絵文字→象形文字という流れで世界の文字のすべてが絵から始まっている。
つまり、絵を描く能力の獲得なしに文字文化は獲得できなかった、というのが人類史的法則ということができる。
子どもの発達もこれと同じことが言える。
本来であれば絵から文字へと発達していくべき順序を狂わされた子どもは、絵が描けない子になってしまうのである。
子どもの絵の正しい発達過程は以下の通り。
・1歳
2足歩行によって解放された手でなぐりがきを始める。
最初は点々、次第にうずまき型や上下のたて往復型へ進化。
・2歳
手の働きに目の働きが結びついて、とじたまるや一本の線が引けるようになる。
絵に意味づけを始める。
・3歳
2歳半から3歳頃になると描く前から意味をもたせたなぐりがきを始める。
・4歳
ことばの発達に導かれて絵が発展し始める。
・6歳前後
絵に基底線が登場。
・7歳
複数の角度から描き分けられるようになる。
基底線による表現方法から脱却を始める。
・9歳
大人の絵への一歩を踏み出す。
本書では、子どもの発達と絵の関係だけでなく、子どもの絵への大人の関わり方、子どもが絵を描く環境の整え方、そして発達過程を崩されて絵を描けなくなった子どもの立ち直らせ方も紹介。
子どもの絵の見方、育て方を徹底的に解説した本と言える。
感想
この本、今年読んだ本の中で一番良かったです。
7月に入ってしまったけれど、この6ヶ月で読んだ48冊の中で間違いなくナンバー1。
2週間ほど前にクレヨンを新しく購入して以来、毎日お絵かきを欠かさない娘を育てているからこそ、余計にそう思うのかもしれませんが。
一番参考になったのは、やはり子供の発達と絵の関係。
娘が毎日するなぐりがきに、こんなにもたくさんの意味と、そしてなぐりがきにも成長過程が絡んでいるということは目から鱗でした。
本書に書かれたことを意識して娘の絵を見てみたら、著者の言う通りで鳥肌が立ちました。
下の写真は2週間ほど前に描かれた娘の絵です。
見ての通りなぐりがき。
下の写真は3日ほど前に娘が描いた絵です。
なぐりがきではあるけれど決定的な違いが…。
2週間前はほとんど線のみで表現されていたのに、たった2週間後にはうずまきを描いているんです。
本書を読まなければ、非常に小さくて、でも非常に意味のある娘の絵の変化を見逃すところでした。
本書には、1歳から9歳までの子どもの絵がたくさん紹介されています。
その中には大人の絵を教え込まれて自分の絵を描くことができなくなってしまった子の作品や、文字を教え込まれて絵を描けなくなった子が画用紙に文字を描いた作品も掲載されています。
本来の絵の発達過程を進んでいる子の絵と見比べると違いは明確で、かなり衝撃を受けました。
また、「かいて!かいて!」とせがんでくる子も、自分の絵を描けなくなっているのだそうです。
そんなこと想像もしませんでした。
この本を読んでいなかったら、近い将来、娘が「かいて!かいて!」と言ってきても、そこに問題があるなんて思わなかったでしょう。
本書によって、子どもの絵の見方が180度変わりました。
子どもの絵には、こんなにもたくさんの情報が盛り込まれていたとは本当に驚きです。
娘にはお絵描き大好きな子になって欲しいので、本書に書かれていたことを参考にしながら娘の絵を見守っていこうと思います。