湊かなえさんの『花の鎖』を読みました。
湊かなえさんの本は途中で閉じるのが難しいので週末まで我慢しようと思ったのですが、堪えられず…。
読みかけの本を放って読み進めてしまいました。
またしても寝不足です。
目次
あらすじ
両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花。職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繫いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。
(引用元:本書の背表紙)
25歳前後の3人の女性、梨花・紗月・美雪の物語。
舞台は彼女たちが住む町、アカシア商店街とその周辺。
でも彼女たちに接点はなく、それぞれ独立した物語として話は進んで行く。
梨花は両親を同時に亡くし、祖母と暮らしていた。
ところが、その祖母ががんで入院することに。
手術費用を用意しなければならなくなった矢先、勤めていた英会話教室が破たん。
給料未払いのまま解雇されてしまった。
お金に困った梨花は、生前母あてに毎年大きな花束を送ってくれていたKという人物を頼ることに。
しかし、母親の遺品を整理してもKに関する情報は何も見つからない。
梨花はKの注文を受けて毎年自宅へ花束を届けてくれていた花屋の息子、健太の協力を得ながらKについて調べ始める。
紗月は公民館で絵画教室の講師をする傍ら、アカシア商店街にある「梅香堂」という和菓子屋でアルバイトをしている。
父親は生まれる前に亡くなっており、ずっと母親と2人暮らし。
最近は早く結婚するよう母親に急かされている。
そんなある日、「K」という差出人から手紙が届く。
送り主は短大時代の同級生である希美子。
5年ぶりに再会した場で希美子から思いもよらない頼みごとをされてしまう。
紗月がその頼みごとを引き受けるということは母親を裏切るということ。
悩む紗月は決断を下すためにコマクサという花を求めて八ヶ岳に登ることに。
美雪は勤めていた職場で知り合った和弥と結婚。
なかなか子どもに恵まれず、悩みながらも幸せな生活を送っていた。
そんなある日、和弥が県主催の設計コンペティションに参加することに。
設計のことはわからないながらも美雪なりに協力し、二人三脚で頑張っていた。
その甲斐あってか、和弥の設計図は最終選考に残った。
ただし、和弥の名前ではなく事務所の名前で。
知らぬ間に事務所の代表に名前を書きかえられていたのだ。
一時は落ち込むものの、何とか気持ちに折り合いをつけて前に進もうとする2人に更なる不幸が忍び寄る。
絡み合うことなくまっすぐに伸びていた3人の運命の糸。
しかし、梨花がKの正体に近づくにつれ、3人の関係に変化が見え始める。
感想
凄く凄く面白かったです!
本当は「ここが面白かった!」とか、「ここで泣いてしまった!」とか、「ここで物語のカラクリに気づいた!」とか具体的な感想を述べたいのですが、それをするとネタバレになってしまうので…。
「面白かった」のひと言で片づけないといけないところが本当に心苦しい。
でも、少しだけ言わせてください!
私が一番好きだったのは紗月の物語。
何が良かったのかと言うと、多くを語りすぎないところです。
私にとっての小説を読むうえでの一番の楽しみは、読み終えた後もその物語のことをずっと考え続けられる余白を残してくれる点。
紗月の物語にはそのための余白が十分にありました。
だから、読み終わってからも「この2人はその後どうやって関係を築き上げていったのだろう…。」「その後も2人でたくさんの山に登ったのかな…。」とか妄想が膨らみっぱなし。
一度読み終えた後に紗月の物語だけもう一度読み直したほどです。
それもこれも、紗月の話に限らず、梨花や美雪の話もうまく余白を残してくれているからなのですが…。
あぁ、はっきり書けないところが辛い…。
それと、紗月の物語は登場する花や景色をイメージするのも楽しかったです。
描写が丁寧なので、登場人物たちと一緒にその景色を眺めているかのよう。
山や花がお好きな方は読んでいて更に楽しいはず!
私は、初めて読んだ湊かなえさんの本『告白』よりも『花の鎖』の方が好きです。
湊かなえさんは「イヤミス(読後、イヤな気持ちになるミステリー)の女王」と言われているそうですが、『花の鎖』はむしろすっきりした終わり方。
物語に潜むカラクリも難しすぎず、読み進めていくうちにすべてが繋がります。
それでも読んでいる間はワクワクドキドキしたし、主人公たちと共に悩み・悲しむことができました。
そして読み終えても、またすぐに読み直したくなる。
しばらく『花の鎖』の物語の中で暮らしていけそうです。
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