『麹町中学校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』を読みました。
『学校の「当たり前」を変えた校長先生が子育ての「当たり前」について考えてみた。』というフレーズに惹かれて。
今まで読んできた子育て本とは一味も二味も違い、「うーん、深い。」と唸りながらページをめくりました。
目次
内容
著者は千代田区立麹町中学校長の工藤勇一先生。
教師としての経験、2人の息子(既に独立済み)を持つ父親としての子育て経験をもとに、子どもが生きる力をつけるために親ができることとして、本書で37の事柄を紹介している。
子どもたちがこれからの時代を生き抜くために最も必要な能力だと著者が考えているもの、それは「自律」。
「自律」とは自分をコントロールするという意味。
従来の学校で重視されてきたのは、礼節や忍耐、そして協調。
これらはいずれも、教師が子どもたちに指示を出すものばかりで、子どもたちの主体性を奪ってきた。
このような教育では、変化の激しい今の時代を子どもたちが生き抜くことは難しい。
もしも、「自ら考え、判断し、行動できる子どもに育ってほしい。」と我が子を見て思うのであれば、家庭でも子どもに手をかけるポイントを見極めていくべきであるというのが著者の考え。
その指針となるものを紹介しているのが本書。
37の項目の中には、
・子どもの問題は大人が勝手につくっている
・なんでもかんでも叱らない
・差別する心は消せなくても、差別しない行動はできる
・家庭学習の習慣は、子どもの時間を奪うだけ
・約9割の子どもがいじめ加担者
等がある。
一般的な子育て論から始まり、信用、差別、コミュニケーション、家庭学習、いじめなど、長年の教師経験と、父親としての経験を融合させた幅広いテーマで綴られている。
感想
学校の「当たり前」をやめた先生が考えることだけに、読みながらハッとさせられることが多く書いてありました。
多くの子育て本では、子どもの自立を促す方法を説いたものが多いです。
でも、本書の著者が子育てにおいて目指すものは「自律」。
「自律」とは自分をコントロールする力のこと。
自ら考え、判断し、行動することができる子が自律した子と著者は考えています。
本書の中で私の心に一番響いたのは、「差別をする心は消せなくても、差別しない行動はできる」という項目。
著者の息子さんが幼稚園に通っていた頃、自分には嫌いな子がいるということに、息子さんが悩んでいたそうです。
幼稚園では「みんな仲良く」と日常的に言われており、「嫌いな子がいる自分はだめな人間なんだ。」と考えていたそうです。
そんな息子さんに、著者は本を使いながら「お父さん、お母さんにも嫌いな人がいるよ。」と伝えたそうです。
息子さんはこの話を聞いたときは信じられないといった様子だったそうですが、次第に安心して幼稚園に通えるようになったそうです。
これを読んで、普段の自分の娘に対する言動を思い出してドキッとしました。
私は保育園からの帰り道、娘によく「お友達と仲良く遊べた人?」って聞いていたのです。
娘は恐らく意味はわかっていないと思いますが、毎回「はいっ!」と言っていました。
このまま、毎日毎日このやりとりを続けていたら、数年後には、私自身が娘を苦しめていたかもしれません。
自分にも苦手な人や嫌いな人がいるのに、娘には「みんなと仲良く」を強制していたなんて…。
自分の言葉の無責任さに気づいて恥ずかしくなりました。
今気づけて本当によかったです。
本書のおかげで、近い将来、娘が人間関係で悩んだときのためのシミュレーションもできました。
「嫌いな人、苦手な人がいてもいい。」ということ、そういった人たちとの接し方(嫌いだからと言って仲間はずれにしてはいけないとか、無視してはいけないとか)をきちんと伝えられそうです。
著者の本は「多様性」について多く触れられていて、毎回勉強になります。
「違いを認め合おう」と言われても、実際はなかなか簡単にできません。
でも、著者の本を読むと、「そんな簡単なことだったのか!」という気づきをたくさん得られます。
自分の中に無意識のうちに根付いてしまった固定観念を取り除く作業は大変ですが、自分の中の「当たり前」を少しずつ見直していこうと思います。
娘に私の「当たり前」を押しつけてしまう前に。
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