『マチネの終わりに』を読みました。
11月1日から公開させる映画の前に、どうしても原作を読んでおきたくて。
久しぶりの小説。
しかも大人のラブストーリー。
怒りも悲しみも、何もかも静かに語られるストーリーは秋の夜長の読書に最適な1冊でした。
目次
あらすじ
天才ギタリストの薪野(38)と通信社記者の洋子(40)。
深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り合う日はやってくるのかー。
出会った瞬間から強く惹かれあった薪野と洋子。
しかし、洋子には婚約者がいた。
スランプに陥りもがく薪野。
人知れず体の不調に苦しむ洋子。
やがて、薪野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが・・・。
(あらすじはAmazonよりお借りしました。)
感想
ラブストーリーに欠かせない、いわゆる邪魔者が2人の運命にいたずらを加えたところから、ページをめくる手を止めることができなくなりました。
若い2人が主人公のストーリーなら、もがきながら周りを巻き込み、愛を実らせ、邪魔者を排除してハッピーエンド。
そんなストーリーになるのだろうけど、『マチネの終わりに』の主人公はアラフォー。
しかも、天才ギタリストと優秀なジャーナリスト。
決して取り乱さない。
もがいているんだけど、すごく静か。
運命や邪魔者に牙を剥くのではなく、自分に降りかかった出来事はすべて自分との対話で解決していく。
そんな主人公たちの性格が結果的に2人の運命の歯車を狂わせてしまうのだけれど、がちゃがちゃした落ち着きのない性格の私は2人の落ち着いた雰囲気に憧れを抱かずにはいられませんでした。
全部読み終えてみて初めて「面白かったな。」という感想を抱きましたが、前半はあまりストーリーにどっぷり浸ることができず。
理由として
・主人公の2人の出会いから付き合うまでがスムーズ過ぎて面白みに欠けた。
・薪野の演奏家としての不調の表現があいまいで状況を把握しづらい。
・主人公の2人が優秀過ぎて感情移入しづらい。
といったところが原因かなと私は感じました。
でも一番の原因は、洋子の父が作った「幸福の硬貨」という映画と、それにまつわる歴史的背景に絡む話の説明が少し雑なせいかなと思います。
歴史の知識がない私に原因があると言われればそれまでですが、「知識がない人でも楽しめる」本ではないです。
逆に、歴史がわかる人にはただのラブストーリー以上に楽しめるのだと思います。
あと、普段使わないような難しい言葉がちょくちょく出てくるのも、物語の世界に浸れなかった要因の一つ。
私は小説を読む時はその世界に入り込みタイプ。
でも、『マチネの終わりに』はたまに出てくる言葉が難しくて、そのたびに「これなんて読むのかな?」とか「文脈的にこんな意味かな。」とかいちいち現実世界に引き戻されました。
平野啓一郎さんの本は読むのが初めてなので、この方の著書はどの本もこんな感じなのか、作品のイメージを作るために『マチネの終わりに』だけ、あえて難しい言葉を多用しているのかは不明です。
私個人の感想としては「すっごくおもしろかった!おすすめ!」とは言えないけど、前述した通り、最後まで読んでみると「なんだかんだ面白かったかな。」と言える小説です。
映画は11月1日公開
小説の感想は「まぁまぁ」ではあるけれど、映画は変わらず観たいと思っています。
歴史や芸術がたっぷり盛り込まれたこの壮大なラブストーリーが映画でどう表現されるのか楽しみです。
東京やパリ、ニューヨークの景色を楽しめるのも実写ならでは。
まだ映画を観に行ける日は決まっていないのですが、観たら感想書きます。