非認知能力に関する本3冊目。
『私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑む』を読んでみました。
貧困層の家庭で育つ子どもの非認知能力を伸ばし、格差をなくすための方法が書かれた本です。
最近、「子どもの貧困」という言葉を日本でも聞くようになりましたが、そのような子を実際に見たことがないので、私はどこか日本の話ではないように思っていました。
ですが、本書の〈日本語版前書き〉には、とても衝撃的なことが書かれていました。
正直、非認知能力について書かれた本書よりも、日本の子どもの貧困に関する本を今すぐ読みたくなったほどに。
でも、その気持ちを抑えて、『私たちは子どもに何ができるのかー非認知能力を育み、格差に挑む』を最後まで読んでみました。
率直に言って、読んでよかったです。
その理由は感想でお伝えします。
目次
内容
非認知能力を伸ばすには、子供の属する環境が重要である。
特に、子供の感情面、精神面、認知面の発達には家族が大きな影響を与える。
幼少期にネグレクト、DV、両親の離婚など、「深刻な機能不全に陥った家庭」でストレスを受けながら育つと、知的機能をつかさどる最も繊細で複雑な脳の部位の発達を阻害し、感情面や認知面での制御能力の成長を妨げる。
非認知能力を育む絶好の時期は3歳未満。
逆に言うと、この時期が子供の発達において最も危機が潜む期間でもある。
家庭で高いストレスを受けて育った子供は、注意を向けたり集中したりするための能力の土台となる神経の連結ができあがっておらず、幼稚園以降の学校生活に困難が生じる。
彼らがたどる道は
①家庭で受けたストレスによって授業に集中できず、勉強についていけなくなる。
↓
②落ちこぼれることによって自分も学校も嫌になる。
↓
③落ちこぼれたことが更なるストレスとなり、問題行動の原因となる。
↓
④問題行動は教室での非難や罰につながり、高ストレス状態が維持されて余計に何事にも集中できなくなる。
この悪循環が小学校に通うあいだ、ずっと続いてしまう。
本書は、貧困層の子どもたちのこうした悪循環を断ち切り、格差をなくすための解決策を提示している。
感想
非認知能力について知りたくて手に取った本でしたが、非認知能力だけでなく、貧困や悪い家庭環境が子供にもたらす影響についても学ぶことができて、とても勉強になりました。
非認知能力の発達は3歳までが特に重要だそうです。
この時期に家庭でストレスを受け続けた子どもは、その後の幼稚園や小学校で環境になじめず、集中力がないために学校の勉強についていけなくなり、教師から目をつけられて更なるストレスを抱え、問題行動を起こす、という悪循環にはまるそうです。
そういった悪循環を断ち切るために、また、家庭でストレスを受けている子どもたちを救うために、私たちに何ができるのか?というのが本書の内容でした。
特に興味深かったのは、生徒をまとめるために厳しい罰則を設けるのは逆効果だという研究結果。
日本の学校にも、意味の分からない校則やら罰則がたくさんありますよね。
私が通っていた私立の中学校・高校でも、肩についた髪の毛は2つに結べだとか、もっと長い場合は三つ編みにしろだとか、スカートはひざ下丈だとか、靴下は三つ折りだとか、寄り道は禁止だとか、学校指定のカバン以外は登下校で使用してはいけないだとか、思い出したくないほどたくさんのルールがありました。
そして、ルールを破ると親が呼び出されたり、私物を取り上げられたり。
こういった過剰な規則や罰則は、実は子どもの学力を下げているそうです。
しかも、ルールを破った生徒だけでなく、ルールを守っている生徒の学力さえも。
逆に、アクティブラーニングのような「自律性」「有能感」「関係性」という3つのポイントをおさえた環境を教師が生徒に提供できている授業では、トラブルを抱えていない生徒だけでなく、トラブルを抱えた生徒も一生懸命課題に取り組むそうです。
「学級崩壊」という言葉が頭から離れない私にとって、これはとても有益な情報でした。
やはり、生徒をおさえつけるだけの教育は、もう時代遅れだということがよくわかりました。
娘が近い将来通うことになる、小学校・中学校・高校選びの参考にしようと思います。
もちろん、本人の意思を一番に尊重しますが。
私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む
- 作者: ポール・タフ
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