遅まきながら、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読みました。
3章を読んで、自分の読解力にヒヤリ、娘の今後の教育方針にモンモン。
2章までのAIの話が文系脳の私にはなかなか難しくて挫折しかけましたが、なんとか読み切ることができました。
最後まで読んだ感想は「今この本を読んでおいてよかったー!!!」。
この一言につきます。
夫に本の内容を力説したほど。
内容を簡単に紹介します。
目次
概要
作者は「ロボットは東大に入れるか」という人工知能プロジェクトを始めた新井紀子氏。
このプロジェクトの主役、通称「東ロボくん」は、今や大学の模擬試験でMARCHや関関同立の合格圏内に入っている。
人間に代わってAIに仕事をさせている企業も少しずつ増えている昨今、今後はこの流れに拍車がかかることは間違いない。
ホワイトカラーの仕事の大半をAIが担うようになる時代がこれからくる。
そうなったとき、AIよりも能力の劣る人間に仕事はあるのか?
労働市場はどうなってしまうのか?
著者はそのことを危惧している。
では、どうすればAIに仕事を奪われずにすむのか?
AIの弱点は
・万個教えられてようやく一を学ぶ
・応用が利かない
・柔軟性がない
・決められたフレームの中でしか計算処理ができない
といった点。
つまり、
・一を聞いて十を知る能力
・応用力
・柔軟性
・フレームに囚われない発想力
といった能力を持ち合わせていれば、AIに仕事を奪われることはない。
ところで、AIに仕事の多くを奪われる可能性が出てくるのはどれくらい先のことなのか?
著者は今後10年~20年の間に、その時代がやってくると言っている。
そこで問題となるのが、今後10年~20年後に社会で戦力となるはずの現在の中高生の能力。
AIに仕事を奪われないために人間が必ず身に付けておかなければならない能力は読解力を基盤とする、コミュニケーション能力や理解力。
しかし、現在の日本の中高生の読解力は危機的状況と著者は主張する。
それは、著者の体感ではない。
著者は現在の中高生の読解力を把握するため、「基礎的読解力調査」を始めた。
調査のために開発されたテストの名はRST(基礎的読解力を調査するためのリーディングスキルテスト)。
RSTではかれる能力は「係り受け」「照応」「 同義分判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定」という6つの分野。
このRSTを使って全国25,000人の基礎的読解力調査を行った結果、わかったこと。
それは
・中学生の半数は教科書を読めていない
・高校生は学年が上がっても読解力が伸びていない
という恐ろしい事実。
では、子どもたちに読解力を付けさせるにはどうしたらよいのか?
その問いに対する著者の答えと、AIに仕事を奪われないための方法が本書の最後に記されている。
感想
正直、2章の途中で一時期この本を放置してしまいました。
なかなか本題に入らない感じがこの本への興味を損ねてしまって…。
最後まで読むと1章、2章の重要性がわかるのですが、読んでいる最中は「子どもたちの話はいつででくるのー?」と思ってしまいました。
そんな風に思いつつも、2章の「AIに何ができて、何ができないのか?」という部分については、とても明確に書かれていて興味深い内容でした。
テレビでやっている「AIに仕事を奪われる!」的なお偉いさんたちが偉そうに発言している特集も、間違っている(AIについて誤認している)部分があるようです。
やはり、専門的なことは専門家の話を聞くのが一番だなと思える内容でした。
でも、この本で一番面白かったのは本題である3章です。
「今の子どもたちはこんなに教科書が読めていないの?」という驚きももちろんですが、本書の中で出てくるRSTの問題を解くことで明るみに出た自分の読解力にもヒヤヒヤ。
私は中学受験のための勉強をしていた小学生の頃から図形とかグラフの問題が苦手なのですが、ずっと「自分は文系脳だから仕方ない。」と思っていたのです。
でも、この本を読んで、「文系脳なんて関係ないんだ。問題文をきちんと理解していないから解けないのか。」という結論に達しました。
なぜなら、本書の中で「イメージ同定」と「具体例同定」の問題が解けなかったり、解けても時間がかかったりしたからです。
この事実を受け入れるのは結構しんどいですが、受け入れざるを得ない・・・。
それと同時に、やはり考えてしまうのは娘の今後の教育方針について。
「教育方針」なんていうとすごく大げさに聞こえてしまいますが、ようは今の日本の学校教育・教育カリキュラムに娘をゆだねて良いのかということです。
『保育園義務教育化』に続き、この『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』でも、日本の教育がいかに遅れているか、そしていかにずれているかがよくわかりました。
国やお偉いさんを批判してばかりいても仕方ないのはわかっていますが、子どもの幸せを願う親としては、やっぱり見過ごすことはできません。
「学校の勉強ができていれば大丈夫」、「大学を卒業させておけば問題ない」という考えはやはり短絡的で、親がもっと子どもの教育にかかわること、子どもの視野を広げる努力をすることは不可欠だと痛感しました。
そのためには、親である自分自身が勉強を続け、視野を広げる努力を惜しまないことが大切だということも。
AIがホワイトカラーの仕事の大半をこなすようになると言われる10~20年後。
その頃、社会で働いているのは今の中学・高校生だけではありません。
政治家やマスコミは人生100年時代とあおって、70歳まで働くことを私たちに要求し始めています。
つまり、10~20年後には私たちもAIに仕事を奪われる可能性がとても高いということです。
そうなったら、人生100年時代のための準備をするどころではありません。
本書の中でもっとも背筋が凍った部分はP169~171ページ。
社会にとって重要なのは、AIに今の仕事を奪われた人の大半が、リストにあるような仕事に、あるいはAIの登場によって創造される、これまでにはなかった、AIにはできないけれども人間にはできる新たな仕事に転職できるかどうかです。そうでなければ、多くの人が失業してしまうからです。そんなことになったら、社会は大混乱です。その影響は、職を失わなかった人にも及ばないはずがありません。可処分所得の中央値が劇的に下がれば、今までのようにモノやサービスを購入できなくなるでしょう。そうなれば、パシティエや美容師など、AIに代替されない仕事にまで影響が拡大するからです。
ケーキを作っても、美容師の腕を磨いても、そのサービスに対してお金を払う人がいなければ生きていけないということです。
背筋が凍りますよね。
10年~20年後、どんな未来がやってくるのか?
気になった方はぜひ『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んでみて下さい。
【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち
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