古市憲寿さんの『保育園義務教育化』を読んでみました。
この本は本屋さんで偶然出会い、タイトルに惹かれて購入しました。
娘を保育園に預けることが決まったものの、本当にこれでよいのかと迷いがあった私。
そんな時に『保育園義務教育化』という本のタイトルを見て、保育園に娘を預けて働く自分の背中を教えてもらえる気がしたのです。
読み始めてすぐに、この本の内容は私が思っていたものと全然違うことに気づきました。
とても良い意味で。
この本が押すのは私の背中だけではありません。
少子高齢化が加速する日本の背中を押します。
目次
内容
『保育園義務教育化』は、少子化が加速する今の日本の現状と原因、解決策について、具体的にわかりやすく書かれている本です。
本のタイトルにあるとおり、筆者は保育園を義務教育化すれば日本の少子化問題は解決すると考えています。
その理由として、
・「母親 」に厳しい目を向ける日本社会の現状
・人生の成功において必要な6歳までの教育
・日本の少子化が加速している原因
・子どもを預けて女性が働くメリット
をあげています。
この本のすごいところは「少子化」という1つの切り口に対して、読者を選ばないという点です。
少子化問題と言うと、政治や経済に強い関心を抱くおじさま方のテーマと思われがちです。
でも、この本はおじさまだけのものに留まりません。
私のような子育てに悩む母親が読めば心が軽くなります。
幼児教育に興味のある方にも参考になる内容です。
結婚や子どもを持つことに明るい未来を抱けない若者は、この本を読めば原因とやるべきことがわかります。
子育て世代に冷たい視線を送る人は自分の心と向き合うきっかけをもらえます。
今の日本がいかに子育てしにくい国なのか、日本の少子化対策の問題点と解決策がわかりやすくまとめられた1冊です。
各章の概要
はじめに 「お母さん」が「人間」だって気づいていますか?
「親が人間だって何歳の時に気づきましたか?」という1文で始まるこの本。
日本では親、特に母親に対する社会の要求がどんどんエスカレートしている。
・電車にベビーカーで乗れば白い目で見られる
・新幹線や飛行機で子どもが泣くと嫌がられる
・仕事を頑張ると「子どもがかわいそう」と言われる
・小さな子供を預けて旅行にでも行ったものなら鬼畜扱いを受ける
こういった状況をから、筆者は「母親は人間扱いされていない」とまで言っている。
この状況を改善するには保育園を義務教育化するのが良いと筆者は提案。
保育園義務教育化には
・待機児童問題が解決する
・子どもを保育園に預けるうしろめたさを感じる必要がなくなる
・子育てで孤立する母親を救える
・虐待が減る
・子どもを早いうちから教育することで日本全体のレベルが上がる
という利点があり、結果的に少子化対策になるというのが筆者の考え。
第1章 「お母さん」を大事にしない国で赤ちゃんが増えるわけない
日本の「お母さん」を取り巻く現状が書かれている。
出産で体力を使い果たしたぼろぼろの体を休める間もなく始まる育児。
そんな母親をさらに苦しめるのが「母乳教」。
追い打ちをかけるのは頼りにならない父親。
母親はどんどん孤立していき、
・子どもがかわいく思えないことがあると答えた母親は約8割。
・虐待死の44%が子どもが0歳の時に起きている
というデータもある。
母親を取り巻く環境を改善しなければ赤ちゃんは増えないということを筆者は主張している。
第2章 人生の成功は6歳までにかかっている
日本の子育てで教育資金が最も必要となるのは大学4年間。
でも、世界では小学校に入学する前の乳幼児期の教育にお金と時間をかけることが一番重要だと考えられており、それを裏付ける実験結果もある。
乳幼児期の教育で特に重要なのが「非認知能力」。
「非認知能力」とは子どもたちの「生きる力」のこと。
この「非認知能力」は集団の中でこそ磨かれるもの。
だからこそ、保育園を義務教育化することで子どもたちの「非認知能力」を磨くことが社会全体の「レベル」を上げることにつながり、格差が広がる日本にとって重要なことだと筆者は考えている。
第3章 「母性本能」なんて言葉、そもそも医学用語でもなければ根拠もない
日本の歴史を振り返り、「母性」という言葉や「専業主婦」という生き方が比較的最近できたものであることを説明。
これらの考え方は既に今の時代に即していないこと、時代にあった「生き方」「考え方」を提唱している。
第4章 少子化が日本を滅ぼす
かつて人口減少を望んでいた時代が日本にもあったこと、政治家が少子化対策に本気になれない理由などを説明。
フランスで成功した少子化対策を紹介し、今現在日本で行われている「第三子支援」は40年前にフランスで失敗に終わった政策であることを伝えている。
第5章 草食男子が日本を滅ぼすというデマ
「最近の若い人はセックスをしない」ということが少子化の原因にされることがあるが、筆者はその説を完全に論破。
今のおじさん世代が若かったころの雑誌の企画などを紹介し、草食男子が原因ではないことを立証している。
第6章 女性が待望される時代
独身男性のうち、年収400万円以上はわずか25%。
2000年以降、職業が「女性化」しており、男性にとっては働きづらい社会になっていることを説明している。
そのため、「専業主婦」という生き方は女性にとってリスクが高く、共働きであることが家庭を営むうえでリスクヘッジになると提案。
「男性が強がる時代」「男性に期待する時代」は終わったと筆者は言っている。
第7章 0歳からの義務教育
改めて保育園義務教育化のメリットを説明。
・「義務」とすることで、「三歳児神話」や「子どもを保育園に預けるのはかわいそう」という偏見をはねのけられる。
・母親の孤立化を防げる。
・待機児童問題が解消する。
・乳幼児教育で格差をなくし、人生の成功者を増やせる。
・乳幼児教育によって犯罪者や生活保護受給者が減る。
保育園義務教育化に立ちはだかる「保育園を増やす方法」や「保育園の質向上」「保育士の待遇問題」などを取り上げている。
感想
この本を少子化対策のマニュアルにすれば、日本の少子化問題は解決するのではないか。
『保育園義務教育化』を読んで本気でそう思いました。
安倍総理は読書がお好きと何かで読んだのですが、『保育園義務教育化』はお読みになったのかしら?とまで思ったほど。
驚いたのは、今現在日本で行われている少子化対策は40年前にフランスで失敗に終わっているということ。
当然、政治家の方たちはこの事実をご存知だと思います。
(知らなければ、それはそれで大問題です!)
そのうえで、なぜ、その失敗策を継続しているのか?
さらに驚いたことは、フランスでは既に少子化問題は解決しているということ。
つまり、成功事例があるということです。
なぜ、その成功策をマネしないのか?
(政治家の方が成功策を知らなきゃ知らないで、これまた大問題です!!)
この本を読んでいて、今の政治家は少子化対策を解決する気は全くないのだなということがよくわかりました。
『保育園義務教育化』でもう1つ興味深いと思ったテーマが第2章の乳幼児教育について。
「小さいうちから勉強を学ぶ」ということではなく、集団生活の中で「人間力」や「生きる力」を学ぶことの大切さを教えてくれています。
「非認知能力」についてとても興味がわいたので、「非認知能力」に関する本と、この章で紹介されていた『幼児教育の経済学』と『「学力」の経済学』という本を読んでみることにしました。
日本の少子化の深刻さと、その対応策についてこんなにわかりやすく書かれた本はないと思います。
7月21日(日)に参院選があります。
選挙の前にこの本を読み、そして、必ず投票に行ってください。
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